2006年04月09日

第十六話 明日から

 ふたりの少女が、まるで鏡のように向かい合っていた。瓜二つの顔立ち、背の高さ、そして髪型。薄暗い部屋に明かりは無く、天井の窓、月明かりを頼りに、二人は互いを見つめていた。
「これで大丈夫かな? おかしなところは無い、ミナ?」
 着飾った姿――屋敷から支給された制服とエプロンを身に着けて――で、エレンは不安そうに確かめる。もうひとりの少女、ミナは無言で小さく頷いた。

 ふたりはスカートの裾を軽く持ち上げ、ぎこちなく頭を下げる。その仕草を何度と無く、何度と無く、繰り返す。次第に疲れてきて、エレンは床に座り込む。
「お勤めなんて初めてだけど……大丈夫かな?」
「一緒だから。大丈夫」
 しゃがみこんで、ミナは姉をぎゅっと強く抱き締める。何があっても、二人はずっと一緒だった。小さな期待と、大きな不安。故郷を遠く離れた地で、新しい生活が始まるまで、あと数時間。
 ふたりの少女は立ち上がって、同じしぐさを繰り返した。
posted by kuga at 22:22 | TrackBack(0) | 短編集
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