2006年02月21日

第八話 階を隔てた世界〜2 残された時間

 赤い炎が燃えた暖炉の火は絶えて、しんとした夜の空気が、足元から忍び寄る。ランプの埃がうっすらと積もり始めたテーブルの上、彼女はそっと指を這わせる。
 窓から注ぐ青白い、月の光を浴びながら、彼女はぼんやりと眺めていた。視線のその先、窓際に残されたイーゼルと、キャンバスを、その上に描かれた自らの姿を。
 ただそれだけを残して去ってしまった青年の面影を、古ぼけた椅子の上に求めて。
posted by kuga at 01:04 | TrackBack(0) | 短編集
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