2010年12月16日

『擦り切れた膝』(House-maid's-knee)

「……はぁ」
 ふとこぼれ出たため息の大きさと、目の前に広がったその白さに驚いて、エルは慌てて周囲を見渡す。
 いつもと変わらぬ光景。
 目の前、そして振り返っても、絨毯の敷かれた廊下は伸びている。
 床をこすろうとした手を止めて、エルは手にしたブラシを見つめた。
 長い間使った道具は消耗していた。ハウスキーパーのミセス・タウンゼントに、新しいブラシを頼まなければいけない……けちな彼女は、あまりいい顔をしないだろうが。
(仕事を続けないと)
 黙々と、エルは絨毯の上をこする。
 考え事をしている暇なんて、無い。
続きを読む
posted by kuga at 21:54| 短編集